ハルのこと⑨

ハルが食欲を無くしステロイドの量を増やして5日が経ちました。

が、食欲は戻らず日々弱っていく一方です。

かろうじて卵黄とミルクには反応しますが、それも食べられる量がかなり減り、ほとんど栄養がとれていません。

それでも水だけは飲みにリビングに来ますが、ふらふらの足元はおぼつかなく目の焦点は合わず、あんなにふっくらと丸かったハルの面影はないくらいげっそりとやせ細ってしまいました。

 

食べなくなってから、強制給餌に踏み切るかどうか迷いました。

わたしの心のなかでは「嫌がるようなら無理には・・・」という思いが強かったのですが、とりあえずやってみようということになりました。

 

太いシリンジにa/d缶(ヒルズほ高栄養フード)を詰め、与えてみましたが、ハルの固く閉じた口にいれるのは難しく、入れても出してしまうし、私も夫もハルもはみ出したペースト状のフードでドロドロになりました。

泣けてきました。

ハルがこんなに嫌がっているのに強制給餌をしてストレスを与える意味があるんだろうか? もし私が逆の立場で、内臓の病気で吐き気や食欲が無いのに無理やり口に突っ込まれたらどれだけ嫌な気持ちになるだろう・・・。

そう思ってもう続けることができなくなりました。

 

でも、それでも、強制給餌をした次の日はなんとなく顔色が良かったのです。それを見ると強制給餌はやっぱり意味があるのか・・・・?わからなくなりました。

 

やがて栃木の鬼怒川決壊で甚大な被害をもたらす原因となった台風がちょうど関東に上陸した日、天気のせいでガラガラだった動物病院に仕事帰りに寄り、強制給餌をするか否か主治医の先生に相談しました。

 

先生は「これは僕個人の考えであって、全く逆のことを言う先生もいるかもしれません」と前置きしたあと、「ハルちゃんが食べなくなった時が寿命と考えて、僕なら強制給餌はしません。それでどんどん弱っていっても・・です」とおっしゃいました。

動物は生に対して人間よりずっとシンプル。

人間だったら「食べたら良くなるかもしれないから食べたくないけど頑張って食べよう」とか、「早く死んで楽になりたいからもうなにもしない」とかできるけど、動物たちはそうではない。

もう少し生きれる=食べる、飲む とシンプルだと。

それを尊重し、寄り添ってあげるだけで十分だと思いますよ、と先生はおっしゃいました。

 

私もそう思っていました。

だけどなぜ病院に行ったかというと、動物の生死のプロの先生に「それで間違いないですよ」と背中を押してもらいたかったのかもしれません。

 

いまはもう殆ど食べられず、一日中横たわって時々自力で体位を替える程度。

水を飲みにリビングまで来るのもしんどそうなので、寝室にも水飲み器を再度置くことにしました。

 

静かにお迎えを待っているハル。

このまま眠るように逝ってくれたら・・・・

わたしもハルを送り出すこころの準備ができてきています。

 

大丈夫。

病気がわかったあと、ステロイドが効いてとても元気な姿を見せてくれたから、そのハルの姿を胸に焼き付けることができてる。

きっとお迎えがきたら、病気もなにもかもハルの体から無くなって、すぐに楽になるよ。

そう思っています。